2023.06.24

続・超一流について ①

彼と出会ったのは昨年4月。1年間とはいえ、超一流の講師と一緒に仕事ができたのは僥倖というほかない。週に1回、授業終了後、彼と話す小一時間ほどの時間は、私にとって実に待ち遠しいものであったのである。超一流の話題はどれも興味深く、学問的知識はもちろん豊富だが、スポーツマンでもあり、何といっても、様々な年代の、学力レベルも様々な子どもたちをいかにやる気にさせ、学力を上げ、志望校合格に導いていったかの実践例、経験談は、私にとって、知的好奇心を存分に刺激してくれるものであり、自分ももっとがんばらないといけないと思わせてくれるものでもあったのだ。
個別指導を中心に、驚異的な合格実績をたたき出し、口コミだけで彼の元には次から次へと仕事が舞い込んでくる。関西一円はもとより、東京、福井、北海道など、彼に声をかけてくる保護者や教育関係者は、往復の交通費はもちろん、宿泊費も準備したうえで、彼に指導を依頼するのである。実力の確かさがうかがい知れるかと思う。
4月、彼が連絡をくれた。東大合格者を毎年多数輩出する、全国的にもきわめて知名度が高い私立高校、その学校名を聞いたことがないという人はいないだろう。その高校2年生を指導して感動したという。てっきり単発の指導かと思いきや、継続的な指導というから驚いた。真の実力がなければ、その超有名難関私立高校が塾講師に授業を任せることはあるまい。
一般的な進学校とはレベルが違う。高1で高校の学習課程を全て終わらせ、2年からは、東大や京大、国立大学の医学部に照準を合わせた演習中心の授業に完全に切り替わる。実際、1学期の中間テストは、東大、京大の過去問と、全統記述模試の過去問で構成されたという。つまり、きわめて高いレベルで、授業の質が担保されなければならないのである。歴史と伝統を持ち、常に高い実績を挙げ続けるその学校にも、優れた先生方が多数いらっしゃることは言うまでもない。そうした先生方をある意味、「差し置いて」、指導を任されたのだ。この事実こそ、彼が超一流講師たる証明と言えるだろう。
生徒たちの理解力や暗記力のすごさに感動したのかと尋ねた私に対して、彼は言う。「彼らの純粋さは本当に魅力的ですね。頭もいいですが、やはり純粋さに尽きると思います。」

この超一流講師が、どうして私の勤務する小さな塾の門を叩いたのか。超一流であるからこその理由があった。