2024.06.03

新・実況中継 ㊳

中学生の授業

   「『副詞的用法』と『形容詞的用法』の意味は、丸暗記するんと違う。副詞がどんな働き                    をして、形容詞がどんな働きをするかを正確に理解したら、~例えば、『幼なじみで親友のセリヌンティウスを助けるために、 走る』んやろ。あとに動詞が続く。つまり、『ために』は、動詞を修飾する副詞の訳し方になるってことや。」

  「セリヌンティウスの命を守るために走ったのは、A君、誰やった?」

男子生徒Aメロス」

   「そうや。そして『走れメロス』の最後、どうなるんやった?B君」

男子生徒B 「…」

   「覚えてない。最後は、セリヌンティウスは暴虐な王によって殺されてまう…」

女子生徒C 「えー、最後、ハッピーエンドじゃなかった?二人は互いに抱き合って、そこに王様が近づいてきて…」

   「そう。メロスは途中、走るのをやめ、セリヌンティウスを見殺しにしようとした、だか    ら自分を思い切り殴れと親友に言い、逆にセリヌンティウスも、一度、メロスが自分を裏切るのではないかと疑ったので、自分を思い切り殴れとメロスに言い、互いに互いを一発殴り合った後、涙を流しながら抱き合ったところに、王様がやってきて『仲間に入れてくれないか』と頼む…」

 女子生徒C 「ほらー、やっぱり。」

   「覚えとかんとな、B君。ところで、「名作」と呼ばれるものは、時代を超えて読み継がれ  ていくもんや。6年生の時、宮沢賢治の「やまなし」読んだな?あれは、君たちのお父さん、お母さんも小学校時代やってるんや、オレも教わった。5年生の時は、「大造じいさんとガン」読んだな。あれも、お父さん、お母さんも教わったし、オレもやった。4年生の時は「ごんぎつね」やったな。あれも同じ。主人公は「ごん」として、人間側の中心人物の名前は覚えてるか?D君、どう?E君は?そうや、『兵十(ひょうじゅう)』や。中1は『少年の日の思い出』中2は夏目漱石の 『坊ちゃん』、中3が森鴎外の『高瀬舟』とくる。こういった作品は教科書の改訂が何回行われようとも、生き残り、読み継がれてきたし、これからも同じなんや。だからこその名作…。」

   「ちょっと待って。なんで、夏目漱石やら森鴎外の話、してんの(笑)?」

女子生徒D「先生が『やまなし』の話、始めて…」

    「おう、した、した。なんでそれが『やまなし』の話になるんや(笑)。」

男子生徒E「先生が『走れメロス』の話を始めて…」

    「そうやった、Bくんがすっと答えてくれたら、これだけ話が横道にそれることはなかっ  たんや。(笑)頼むで。で、不定詞の副詞的用法やけど…」

女子生徒F「先生、先生が読んだ本の中で…」

     「おっと、オレをまた泥沼に引きずり込もうとしてるやろ。(笑)悪い顔してるで。     (笑)」

男子生徒G「でもね、先生。先生のおすすめの本を紹介するって大事なことじゃないですか。(笑)」

    「まぁ、それもそうやな。(笑)」

男子生徒G「でしょ?だから、ぜひ聞かせてくださいよ。」

    「そやな。最近のものなら、瀬尾まい子という作家の『そしてバトンは渡された』はよかった。映画も見たけど、泣いたな、あれは。」

女子生徒H「えー?先生が泣くんですか!(笑)一度泣いてみてください。(笑)」

    「アホなこと言うな。古いので言うと、~。結局、あと10分やないか(笑)しもたーだまされた。」

男子生徒G「たまにはいいじゃないですか。」

女子生徒F「『新・実況中継』のネタもできたことやし。(笑)」

    「そういう問題とちゃう!(笑)」