2024.06.05

超一流講師による「特別授業」 について ①

 私にとっての「超一流講師」が、過日、昇英塾で「特別授業」を行ってくれた。中2特進科で英語の授業をしていただいたのである。

 彼については、昨年、ブログ「続・超一流について」で紹介し、子どもたちに感想文を書かせた。現在、全国的な超有名進学校で、高3、中2の英語の指導を任されている。その進学校が英語という重要科目を塾講師に任せているその事実こそが、彼の実力を何よりも雄弁に物語るであろう。言うまでもなく、高3生は大学の合格実績に直結する。東大に何人合格したかがニュースになり、毎年その人数に一喜一憂する進学校は全国に数多い。しかも、合格者数で毎年トップを争うような学校だからこそ、高3生の指導には、とりわけ熱が帯びることは想像に難くない。

 英語の授業中、課題を早く終わらせた生徒が「鉄緑会」の宿題を始める。その英語の宿題は、東大入試の傾向を踏まえ、英語の長文を読み、英文で要約を行うものなので、途中でストップがかかることを嫌い、そのまま授業の解説を聞こうとしない者がいたという。ちなみに「鉄緑会」とは、東大進学を目指す者が集まる、東大卒や現役東大生が教える有名な塾である。

 そこで、彼は「工夫」した。数学のプリントを用意し、早く終わった生徒にそのプリントをやらせる。英文による要約と違い、準備する数学の問題は、途中でストップがかかっても問題なく、生徒がおとなしく解説を聞いてくれるのだという。  

 つまりは、英語の授業をしながら、数学のプリントまで準備し、質問されれば解説をし、出されたプリントの採点も行う。東大を目指す者が多く、先述のように、毎年東大合格者数のトップを争うその学校のレベルを考えれば、英語は言うまでもないが、数学の教務レベルも東大レベルであることがおわかりいただけよう。  

 自身が東大に合格した実績を持つからでもあるが、英語、数学の2科目を東大に合格させるレベルで教えられる講師はそれほど多くはいないはずだ。そもそも、問題が解けることと、その問題を教えられることとは、相当大きな開きがあるのだ。さらに驚くべきは、彼が最も得意とするのは、実は国語なのである。英語、数学の高いレベルをさらに超えてくるのだと思うと、ある種、空恐ろしいことのように同業者として感ずる。

 彼の実力は十分ご理解いただけたと思うが、もう一つ、エピソードを紹介する。

 近畿地方には、先述した進学校以外にも、ここ十年ほどで、東大、京大合格者を多数輩出するようになった学校がある。この学校では、上記2校以外の大学志望者はある意味、冷遇されるという。そこに通う3名ほどの神戸大学医学部を目指す受験生に英語と数学を中心に、時に国語の指導も行う。

 

 母校で長らく化学の教師を務めた高校時代の友人は、東大、京大で出題される化学の問題を毎年解いていた。

「他の大学とは違って、東大、京大レベルになると、ある種の瞬発力が要求される。その瞬発力は、問題を解くことによってしか維持されない。」

 またこうも言った。「数Ⅲだけは、他の数学とは全く異なる『科目』だ。」

 友人が語った数Ⅲの難しさは、私にも想像はできる。そして、「超一流講師」の彼は、神大医学部を目指す受験生に数Ⅲを教えられるレベルにある。教え始めたころ、偏差値40なかった「全統記述模試」において、直近の模試では、英・数・国、物理、化学すべての科目で65を超えてきたという。半年経っていないのにこの成績。受験生のがんばりも確かに素晴らしいのだが、並大抵の教務力で、成し遂げることのできる成果ではない。科目横断的に非常に高いレベルで指導できる彼の影響によるもの大なのである。

 超一流の証(あかし)と言って差し支えあるまい。