2024.08.08

肉親を失うことについて ④

 814日にバスで名張を出発し、伊賀市内のいくつかのポイントで何人かの人たちを拾ってから一路、東京は靖国神社に向かう。伊賀地域から1台のバスが出、県内他地域に住まう方たちも、それぞれバスで向かう。

 靖国神社に行くのは初めてである。しかも宮司の案内による昇殿参拝(しょうでんさんぱい)だから、思いもひとしおであった。写真でしか見たことがない祖父はもちろん、先の大戦で失われた多くの日本人の御霊(みたま)に対して、哀悼の意をささげた次第である。

 

 この日、バスの車掌さんから、何度も念押しされたことがある。明日、日本武道館に向かう際には、県ごとに色が異なる、胸に着けるバッジを絶対に忘れてはいけない、万一忘れた場合、最悪、中に入れてもらえなくなる可能性もあるということであった。

 その日泊まったのは、聞けば誰もが知る国内有数のホテルで、しかもこの時期、個人で宿泊すれば、とてつもない金額になるであろう。

 「国費」と言われる、政府が宿泊代、交通費等、全額支出する人たちと、我々一般の遺族では扱いが異なる。とはいえ、補助金が出ていることはまちがいなく、夜の食事も豪勢なものであった。

 驚いたのは、国会議員が次々と挨拶に来ることであった。各テーブルを回っていた。三重県選出の衆議院議員、参議院議員と身近に話すことなど、かつてなかったし、最新の政局の舞台裏などを話してくれたりもした。

 

 翌朝、武道館に向かう道すがら、車内で聞いたところによると、三権の長が武道館に入る時に警備がかなり強化され、天皇、皇后両陛下が御所をお出ましになり、武道館にお入りになる時間は最大限の警備体制が敷かれるという。

 「三権の長」とは、「立法府(国会)」の衆議院議長と参議院議長、「行政府(政府)」の内閣総理大臣、「司法府(裁判所)」の最高裁判所長官の四名である。時の内閣総理大臣は、今は亡き安倍晋三首相であった。安倍首相から届いた「全国戦没者追悼式」の招待状は、バッジとともに、記念に残してある。