2024.09.04

シンクロニシティについて ①

 「シンクロニシティ」は、「共時性」または「意味のある偶然の一致」と訳されることばである。

 河合隼雄(かわい・はやお)先生の著作で出会ったのが20代で、その後、社会人になってから4年間心理学を学び、民間資格ではあれ、心理カウンセラーの資格を得ることになった契機になったことはまちがいない。共時性は、そのことばを知った時から、自分にとって、一つのテーマであり続けている。

 子どもたちで、河合先生を知る者はいないだろう。ユング心理学を初めて日本に紹介し、ユング派の心理学者として、カウンセラーとして著名な方である。また、心理学にとどまらず、日本の文化や精神性、文学、宗教、教育など、広範な学問分野を渉猟(しょうりょう)される中で、様々な専門家や学者、宗教者との対談本も著していらっしゃる。言うまでもなく、心理学に関する著作は膨大な量である。

 数年前、「断捨離」なるものをやってみようと思い立ち、書棚の本を処分したことがあった。その際、河合先生と、私にとって最高の名文家で、哲学者、思想家として、あるいは登山家、随筆家としても活躍された串田孫一(くしだ・まごいち)先生の本は外した。絶版になったものも多くあり、今では手に入らないものも多いと思う。

 さて、日曜日は台風10号の接近により、当初予定していた補習授業を休講にした。名張はそれほどの風雨もなかったので、文庫本の新刊を買うため、本屋さんに行った。通販は便利だが、本はなるべく本屋さんで買うようにしている。町の本屋さんは、苦しい経営状況だと聞く。町からなくなれば困るので、少しでも足しになればとの思いからである。

 1件目、置いてなかった。2件目、ここにもなかった。ただ、ある著者の本が目に留まった。その著者の著作は何冊か購入している。中を見ると、ある章が「シンクロニシティ」のことばを含むものとなっていたので、迷うことなく購入し、家に帰って早速その章から読みだした。

 「シンクロニシティ」の章段から読みだして、最後まで読み切った。冒頭にもどって、「はじめに」を読みだしながら、今頃、高校時代の友人はどうしているだろうとぼんやり考えながら、いったん、読書を中断することにした。スマホを見たら、その友人から長いラインが届いていた。

 「意味」があるかないかはともかくとして、「共時性」が実現したのである。