2024.09.14

続・「ちっちゃなおもひで」について ②

 常連さんたちにこの話をすると、皆一様に、こう言うそうである。

 「きっと、『おばちゃん』のこと、よう知ってる子とちゃうやろか。」

 「おばちゃん」は言う。

 「皆がそういうもんやさかい、店の前に張り紙でもしよかしらん、それとも、ラジオとか新聞とかに投書して、名乗り出てもらうように、しよかしらん、とかいろいろ考えるんやけど、店の『売名行為』と思われたら嫌やし、どうしたもんかなと思てんねんわ。」

 「ただな、私は思た、日本もまだまだ、捨てたもんやないなって。」

 同感である。ただ、私には、近所の子ではないように思えた。おそらく、子どもたちの母親が、「ちっちゃなおもひで」から徒歩5分もかからない、嵐電(らんでん・京福電鉄)「北野白梅町駅」の目の前にある、「イズミヤ」ででもあろうか、割りばしを購入し、子どもたちに届けるよう、取り計らったのではないか、そんな風に感じるのである。

 正月3日の北野天満宮の人出は、大変なものであろう。学問の神様として名高い菅原道真公を祀る北野天満宮、とりわけ受験生やその親御さんたちには、非常に人気のある神社である。その参拝者の中に、「おもひで焼き」をテイクアウトした、子ども連れのお客さんがいたのではないだろうか。

 割りばしを「おばちゃん」に届けてくれた子どもたち、あるいは、届けるように取り計らった親御さんがこの小文を読むことはなかろう。しかしながら、「おばちゃん」に代わって、お伝えしようと思う。

 困っている人に対して「施し(ほどこし)」をし、代金など受けとる気持ちを微塵(みじん)も持たずに走り去った子どもたちとその親御さん、「おばちゃん」が心からの感謝のことばを告げたいこと、割りばしの代金を支払いたいことを希望しています。その願い、かなえてあげていただければと思います。