「おばちゃん」の話は聞いていて飽きない。話し好きで、人がいいからであろう、そして何より、朗らかで優しい性格だからであろう、老若男女(ろうにゃくなんにょ)から慕われる。
関西のテレビ局が取材を申し込んできたという。元気に働くお年寄り、といったコンセプトのバラエティ番組で、「おばちゃん」最初、かたくなに断った。ただ、相手の熱心さについに折れ、承諾した。
「私は自分が映ってるテレビなんか見とないから見てへんけど、『テレビ、見ましたでー。』ゆうて、きてくれはるお客さんがいるわ。」
「ただな、おもろいのんは、ここからやねん。東京のテレビ局から電話がかかってきてな、『テレビ見ました。』って言いはんねん。それで、『青汁3か月分、無料で差し上げまっさかいに、その後、青汁の良さを宣伝するテレビに出てもらわ、しまへんやろか。』ってな。」
東京のテレビ局から電話する人が、「差し上げまっさかいに」やら、「テレビに出てもらわ、しまへんやろか」やらとは、言うはずはなかろうが、「おばちゃん」のことばを採録(さいろく)すると、こうなるのである。
「いやー、今までそんなもん飲んだことないのに、『青汁飲んで、元気になりました。』なんてこと言えるわけないやん。周りの友達にウソつくことになってまう。そこでや、こうゆうときは、京都弁は便利や。はんなりと、丁重に断っといた。」
「はんなり(と)」は、京都で頻繫(ひんぱん)に使用されることばである。まずは、「おばちゃん」のことば、「はんなりと」の前後の内容から、意味をある程度自分で考えてから、検索をかけるなり、辞書を見るなりしてほしい。