小学6年生の授業
「ー。答え合わせは以上や。で、みんなに質問。最初の部分にこう書いてある。2行目、読むで。『今日の図工は、カセットテープできいた物語を頭の中に思い浮かべて、自分で想像して絵にするというものだ。(改行)話の内容は、簡単に言うと、ふくろうが夜の森で鳴いている。それだけ。本当に事実として語られているのは『ふくろうが夜の森で鳴いている』ということだけなのだ。あきれるくらい、まったく。(昇英塾テキスト「小学ウィンパス 6年」P14より抜粋。原典は、椰月美智子著『十二歳』)」
「『事実として書かれているのが、『ふくろうが夜の森で鳴いている』ということだけ』なんやったら、『事実として書かれて』いないものには、どんなことが書かれていると思う?この物語は、どんなふうに展開していくと思うかな?」
生徒たち 「…。」
「物語にはいろんなタイプのものがある。犯人を見つける推理小説とか、恋愛小説とか、いろいろや。ちょっと4ページ見て。『物語とは』と書いてあるところ。『すじ(ストーリー)のある話の中で人物の生き方や事件などをえがき、それらを通して、作者の思いを表現した文章』これが、今我々が勉強している「物語」やわな。いろんな物語があるのは事実やけど、この物語を頭に思い浮かべて、絵にするというなら、主人公の『さえちゃん』も、友人の『木下さん』もふくろうの絵を描いたんやろ。事実として書かれたのがそれだけなら、クラスのほとんどの子たちも、ふくろうの絵を描くんとちゃうやろか。どう思う?」
男子生徒A 「作者の心情が書かれていると思います。」
「鋭い!確かにその可能性はある。事実が『ふくろうが夜の森で鳴いている』だけなら、作者自身が物語の中に出てきて、もの悲しさや、恐怖心、つらい心情やなんかが書いてあることはあり得る。ただし、その心情、絵にできるやろか?心情は絵にしにくくはないか?『物語を頭の中に思い浮かべて、自分で想像して絵にする』とある以上、ふくろう、うんぬんの『事実』以外に何かが書かれていないと物語にはならず、図工の宿題として、出されることもないはずや。」
「この質問は難しいよ。オレも正直、何が書いてあるのか、ようわからん。今日の宿題は、これについても次回、各自考えてくること。」