2023.11.03

「入試説明会について ③」

「入試説明会について ③」

「受験」は、中学受験をする小学生はもちろんだが、高校受験をする中学生にとっても、人生における最初の大きな関門と言っていいだろう。どの学校に進学するかというのは、その後の各自の人生のあり方を大きく左右し、合格に向けた、「学習」という労力、そこにかける時間、人格形成の重要な時期において、進路を決定するという様々な悩みや葛藤は、子どもたちを心身ともに、鍛えもするし、疲労させもする。親にとっては、塾や通信教育等にかける「教育費」への支出も結構な額となる。

人生における最初の大きな分岐点、これを成功に導くのが、「塾人」たる我々教育者に課せられた使命である。

公立の中学校に通う生徒は、公立高校を第一志望にする場合が圧倒的に多い。昇英塾においても、私立専願の塾生もいなくはないが、少数派である。

公立高校を第一志望にする場合、通称、「滑り止め」と言われる私立高校を受験し、万一、第一志望の公立高校を不合格になった場合に備えるのである。

「滑り止め」とは言えど、安易な決定は、厳に慎まなければならない。

かつて、こんなことがあった。

 

3から特進科で英語と国語を担当した男子生徒、まじめで、理解力、暗記力とも平均以上の力があり、欠点と言えば、定期テスト期間には必ずと言っていいほど欠席することぐらいだった。

ちなみに、定期テスト前に欠席するというのは、テストの日程から逆算して、自分がどの時点で何をやらなければならないかという視点に欠けている証拠である。直前になって、「放置」していた学校のワークや自分なりの、テスト範囲の学習に充てるのであろう。ただ、こういう学習法を続ける限り、学力レベルの伸びは限定的になる。本当に「できる」子どもは、定期テスト前だからといって休むことはない。定期テスト前だからこそ、来なくてはならないことがわかっている。だから、休まないのだ。

話を戻そう。県内有数の進学校である公立高校に行きたいという志望を持ったその男子生徒、1学期は相当厳しい状況だったが、2学期から次第に頭角を現してきた。合格できるレベルに近づいてきたのである。彼なりの努力があったことはまちがいない。

そうして、3学期、私立高校の受験も終わって、最終的に受験する公立高校を決定するための三者面談を行った。お父様が来られた。

第一志望の公立に合格させてやれる自信はあった。最終的に、残りの期間、どれだけの気迫を持ち、学習に臨めるかが勝負だと思い、そこの気持ちを確かめることが最重要だと思って臨んだその席上、塾生がこういった。「私立のA高校には絶対行きません。」彼が「滑り止め」に受験し、合格した高校に、「絶対行かない」と言い出したのである。「絶対に行きたくない学校」を受験した理由を問いただしたが答えなかった。「万一、公立がダメだったとき、その学校に行かないということは、浪人するか、二次募集の学校に行くしかなくなるが、そのようなことはさせられない。」そう言い、ランクを下げさせた。

私立受験後、「行きたくない。」と感じたのかもしれないが、ともあれ「真相」は不明だ。まちがいなく言えるのは、「高校選び」の失敗である。自分がもしかしたら行くかもしれない学校、いやしくも「滑り止め」ではあっても、ゆめゆめ安易な気持ちで選んではならないのである。

「どうせ、私立には行かない。」たまに、子どもたちからこんな声が聞かれる。「行きたい公立に必ず行かせてやる。」この気迫をもって我々は学習指導に臨むが、「滑り止め」には「絶対に行きたくない。」と言われてしまえば、ランクを下げざるを得なくなるのも事実である。

公立高校を第一志望にしている塾生、保護者にも、ここを理解したうえで、あさってに迫った「入試説明会」に臨んでもらいたいと願うのである。