2024.05.26

「国語の問題、どれぐらいわかるでしょう? ③」

問題  次の表現のおかしいところはどこでしょう。

「広告掲載の商品の入荷が遅れまして、申し訳ございません。お詫びの気持ちを込め、さらにお安く、2割引とさせていただきます。」

  この問題を正解させられる方は少ないと思う。小・中学生で答えられる者はいない。小・中学生に教える内容ではないからである。もう一つ、「ら抜き言葉」同様、ある意味、「市民権」を得ているので、この誤った表現が使用される頻度が極めて高いからである。

  学研傘下のいくつもの塾の講師陣が一堂に会し、各科目の教科会が催された。まず初めに、受検が義務付けられる「講師検定」の、いくつかあるランクの最高ランクに位置づけられた「一流講師」と認定された講師による「基調講演」を聞いた。

 講義内容に関して異論はなかったが、「させていただきます。」の多用と同時に、「なので」の繰り返しに違和感を持った。

 順接の接続詞としての「なので」を会話表現において使用するのは、流行でもあり、ある程度認めざるを得ない。しかし、国語における「作文」「記述式」では、「書き言葉」で書くことが前提であり、「なので」が現時点では正式な「書き言葉」でない以上、「ら抜き言葉」が減点対象であるのと同様、減点対象である。ただし、実際に減点するかどうかは、各学校の採点基準によるだろう。全く減点しない学校もおそらくあると思う。ただ私は子どもたちには口を酸っぱくして、「『なので』は絶対に使うな。」と指導する。そもそも、「なので」は教科書に載っていないことばである。

 検定試験の結果はもちろんのこと、生徒アンケート、授業内容も素晴らしいからこその最高ランクの講師でいらっしゃることはまちがいない。しかしながら、こと、日本語文法に関して、あまり多くをご存じでないことは、お話を聞いてわかった。国語を専門に教える講師陣相手に行う講演の中で、「なので」の連発は、あまり褒められたものではないであろうし、「させていただきます」も何回もお使いであったが、いくつかは明らかに誤用であった。 

 文化庁発表による、敬語「させていただく」の解説を紹介しよう。

 「自分側が行うことを、① 相手側または第三者の許可を受けて行い、② そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われます。したがって、①②の条件をどの程度満たすかによって、「させていただく」を用いた表現には、適切な場合とあまり適切だとは言えない場合とがあります。」

 問題の例文において、「2割引」とするのは、相手側(この場合はお客様)の許可を受けるものではなく、そのことによって自分(この場合は店)が恩恵を受けることもない。つまり、「させていただく」の誤用であり、正しくは、「お詫びの気持ちを込め、さらにお安く、2割引といたします。」となる。